99.ここに一人の貧乏な者がいる。実直で、よく父母に仕え、ひつは農業に精を出し、夜は縄をつくって、ようやく飢えや寒さをしのいでいる。しかしたまたま父親が病気にかかった。だんだん重くなってきたが、薬が効いて治った。しかし翌年また病気が再発し、薬の効き目もなく亡くなってしまった。そのとき既に五両の借金をしていて、しかも看病のため、農業も出来ず困窮してしまった。
隣近所はこれを憐れみ、名主からもう五両借金した。こうして一時の飢えからは脱して、農業に精を出したが、既に十両の借金を背負い、その利息二両が払えない。そこで親類が名主に相談して奉公をさせることにした。その賃金は三両で、そのうち二両は利息の返済にあて、残りの一両で生活する。
こうして五年たったが、借金は元のままだし、母親はますます歳をとる。誰がこの者を養ってくれるのか。実際このようなものは世間にたくさんいる。その家はついには滅んでしまう。
しかしもしここで無利息金を貸して、その借金を返済させて、本業に戻らせれば、農家が減ることなどなくなるのだ。
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