2013/01/16

二宮先生語録89 現代語訳


89.野州は昔から荒地が多い。代官の竹垣直温は越後から貧しい者を呼び寄せ、荒地を開墾させ、新たに農家を300ほどつくった。越後の民は浄土真宗を深く信仰していたが、野州には寺がなかった。
そこで、僧を招いて、いおりをつくり、民の心を安らかにした。
竹垣氏は「寺院の建築はお上に禁止されている。だから私が代官でいられるうちに、寺院をたてなさい。私が去れば、立てることは出来ないだろうから。」といった。それを聞いた民衆は感動し、協力して寺院をいくつか建てた。
法を犯してまで、民を思いやる。なんと厚い心であることか。
後に、代官が代わり山内氏となった。その時に庵がまだあった。そこで僧が寺を建てようとした。それをみて山内氏は驚いて「寺を建てることは禁じられている。これを許せば私が罰せられることになる。」といって、建てることをやめさせた。
この建てる途中だった寺は、屋根もなく、しばらく風雨にさらされたままだった。僧はついに心の病気にかかってしまった。
竹垣氏は民のために官を忘れ、山内氏は官のために民を忘れる。竹垣氏のような人物は昔の立派な人物に比べても恥じることはない。

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