4.草木は春に生まれ秋に実り、鳥獣は年に一回出産する。
これは気運の自然な道である。
しかしその生活は、ただ食物を奪うのみである。
大木は横に枝葉を伸ばし、小さい木が伸びることが出来ないことを気にしない。
小さい木は、大木が枯れるのを待って成長する。
鳥獣はお互いに食べ合う。
強いものは、弱いものを食べ、大きいものは、小さいものを食べる。
草木や鳥獣はお互いに奪いあって譲る事はしないのである。
だからただ一身を養うのみである。
人もまた奪って譲らなければ、草木鳥獣と同じである。
天照大神はこれを哀れんで、推譲の道を定めたのである。
すなわち、一粒の米を推し譲ってこれを播けば、百倍の利益が生まれ、一人が推し譲って田を耕せば、数人を養う事が出来る。
推譲があって人道が定まり、国家が安らかになるのである。
推譲の道というものはなんと偉大であろうか。
書に「まことに恭しくよく譲る」とある。
これは堯の徳を褒めたことばである。その書全体の中心は、譲という一字にある。
もし奪の字だったなら、何の聖徳があっただろうか。
人の道で推譲にまさるものはないのである。
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