二宮先生語録 107 現代語訳 人道は左足で天道は右足

天道と人道とは違うものである。
自然に循環するのは天道で、作為は人道である。
天道に従って生まれ生活し、農作業を努めずに秋の実りを争うのは鳥や獣である。
天道に逆らって農作業に努め、秋の実りを食べるのが人道である。
農業の道は素晴らしいもので、米一粒まけば秋には千倍にもなる。
ナスなどは一万倍にもなる。
人の衣食はこの農業の道により得ることが出来る。

もし怠けて生活し、農作業をせずに秋の実りだけをたくさん食べようとするのは、鳥や獣と同じである。
人と鳥や獣が違う理由を両足に例えよう。
人道を左足として、天道を右足とする。
敷居をまたいで外に出ようとするときはまず左足を出すという規則があるが、これを行う者は人道である。
まず右足を出す者は天道を行う者である。
この両者には遠くへ行けば行くほど天と地ほどの差が生まれるが、もとはこの左と右との違いに過ぎない。
一度敷居をまたいで歩きだすと、左右の違いは分からなくなって、天道と人道の違いがわからなくなって誰も説明できない。
わたしは天道と人道の違いを説明することが出来る。
この違いをわきまえて人道を行ない、鳥や獣の道を行ってはいけない。